専業のライターになったあと、必ず持っておきたい「道具」にはどのようなものがあるでしょうか。プロライターにとっての3種の神器があるなら、そのうちのひとつが「記者ハンドブック」という本です。「専業ライターとしていずれ大きな仕事がしたい!」という人に、なぜこの本が大事かという理由を説明します。なるべく早めに手に入れておきましょう。
記者ハンドブックとは?
一般社団法人共同通信社が刊行する日本語のルールブックが「記者ハンドブック」です。
共同通信社が出している本だけに、新聞記者が利用するものとして一般的ですが、ライターや編集者、校正者など、広告や雑誌、書籍の制作に関わる人たちに知らない人はいないというぐらい有名な一冊です。
例えば、新聞記者として新聞社に就職した人や就職を目指している人が真っ先に購入する本のひとつなのです。
プロライター必携の一冊
文章を書くときに、みなさんはどのように漢字・かなの使い分けをしていますか?
ライターの仕事をしていくと、必ず突き当たるのが「表記ゆれ」の問題です。
「ください」と「下さい」のどちらが正しいのか。
「合わせて」と「併せて」はどちらも漢字で表記した方がいいのか。
もしくは「あわせて」とひらがなにすべきなのか。
クライアントから指摘や質問があった際に、すぐに答えられる人は少ないはずです。
「表記ゆれについてアドバイスを求められたけど、どのように回答すればいいのか…」と悩んでしまう機会は、ライティングの仕事をしているうちに必ず訪れます。
日本語は、言ってみればだれでも書けます。
ですが、「プロの文章」はそれなりの鍛錬を積んだ一部の人にしか書けません。
初めのうちは文章を書くときに「自分の感覚」だけに頼ってしまい、特に意識せずなんとなく書いているというケースがほとんどのはずです。
ですがプロとして仕事をしていく以上、「なんとなく〇〇にしました」という感覚ではなく、明確な基準が必要です。
「記者ハンドブック」が手元にあるだけで、ライティングの際に誰もが抱く不安が解消されます。
WEBライターだからこそ、購入すべき
最近では、副業としてWEBライティングの仕事を始めてそのまま独立する、という人も増えています。
ブログライターやアフィリエイター、クラウド系ライター(いわゆるクラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサイトで仕事を得る人)といったジャンルを問わず、WEBライターであっても記者ハンドブックは持っておいた方がいい、と断言できます。
WEBライティングの場合、仕事の内容にもよりますが記者ハンドブックに合わせて書く、という機会は少ないです。
オウンドメディアやSEO対策の記事など、仕事を発注する側が必ずプロのライティング技術を持っているわけではなく、どちらかというとマーケティングのプロであるというケースの方が多いためです。
それだけに、記事の作成に関してはライター側から基準を提示しないといけないこともあり、また、WEBライティングだけではどうしても学べない領域(用字用語)が生まれてしまうのです。
プロライターとして広告代理店や制作会社などから直接仕事を受けるようになると、1本あたりの原稿料も高くなります。
文章スキルが上がれば、結果的に収入も上がります。そういった意味でも、一冊手元においておくことをおすすめします。
記者ハンドブックは「バイブル」だけど…
このように記者ハンドブックはプロライターにとってのバイブル(聖書)であると言えますが、必ずしも記者ハンドブックに準拠した書き方が必要がかというと、そうでないケースもたくさんあります。
専業のアフィリエイターなど、自分のサイトからの収益のみでを生活することを目指している人には、それほど必要がないかもしれません。
また、小説のように、「独自の文章で世界観に引き込む」という書き方の場合は、記者ハンドブックに合わせる必要はありません。
ただ、将来的に「大手企業や代理店といったクライアントと一緒に仕事をしたい」という人は、少しでも早く手に入れておくべきです。
記者ハンドブックは、あくまでもひとつの「基準」であり、重要なものですが、実際に書かれている通りに文章を書いていくとどうしても漢字が多くなりがちです。
そのため、人によっては「読みにくいな、少し硬い文章だな」と感じてしまうのが難点です。
例えば、女性向けのメディアやWEBサイトでは、ひらがな表記を多く使ったやわらかい文章を求められることが多くなります。あくまでも、基準として参考にしながら、メディアに合わせた柔軟なルール設定が必要になります。
また、媒体によっては独自の表記ルールを定めている組織や企業もあります。
一例ですが、行政関連の文書では「取組」「取り組む」といった使い方があります。
また、朝日新聞社が採用する通称「朝日ルール」などは有名なもののひとつです。
「記者ハンドブック」の運用方法
初めてお仕事をするクライアントに原稿を提出する場合、「記者ハンドブック準拠」である旨を申し添えておくと、表記ゆれについてのトラブルが回避できます。
僕の場合はディレクターとして新規メディアの立ち上げに関わることも多く、仕事の内容によっては媒体ごとの表記ルールを設定することがあります。
そうしたときにも、記者ハンドブックは役立ちます。
今回は、ライターや編集者にとって必携の一冊である「記者ハンドブック」についてまとめました。
独学だけだと、どうしても基本的な部分が曖昧になりがちです。
用字用語をしっかりと身につけて、誰からも頼られる「言葉のプロ」を目指してください。