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バンドのライブ写真で稼ぐには?【ライブカメラマン(フォトグラファー)になる方法】

2020年9月7日

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バンドのライブ写真で稼ぐには?【ライブカメラマン(フォトグラファー)になる方法】

2020年9月7日

音楽好きにとっては「バンドのライブ写真」を撮って生活するライブカメラマン(ライブフォトグラファー)は憧れの存在です。僕も20代の頃はハードコアのライブやクラブでよく写真を撮っていました。
ふだんから割と聞かれることの多い「ライブ写真で稼ぐにはどうしたらいいの?」という質問に対して、どうすればなれるのか、具体的な方法を説明していきます。

ライブフォトグラファーとは?

その名の通り、ライブ写真を撮って生計を立てるフォトグラファーのことです。いろんなバンドを幅広く撮る人もいれば、各アーティストから指名を受ける「専属」になる人もいます。
また、クラブなどの会場では「箱(ハコ)専属」として写真を撮るフォトグラファーもいます。
撮影した写真は、ライブレポートの宣伝用の「オフィシャル写真(オフィシャルフォト)」として、各メディアやライターに支給されます。
このオフィシャル写真を撮る人のことは「オフィシャルフォトグラファー」と呼ばれ、ほかの外部フォトグラファーとは区別されます。
大きなライブやフェスなどのイベントでは、オフィシャルフォトグラファーが複数名いることもあります。
音楽好きな方は、フジロックなどの大規模な音楽フェスで見たことがあるかもしれませんね。

ライブフォトグラファーになるメリット

・バンドやアーティストの成長を間近で見られる
駆け出しの頃の小さなライブハウスから、大きな会場へとステップアップしていくとともに、その成長を一番近い距離で見続けることができます。

最高の瞬間に立ち会える

ライブが最高潮に盛り上がったとき、そのバンドやアーティストがまさしく人気の頂点にいるときに同じ空気を共感できるのは、一番のやりがいです。涙が出るぐらい感動しますね。

写真が多くのメディアに使われる

最近はWEBメディア需要がすごく大きくなっています。好きなアーティストのライブを撮影し、その写真が多くのメディアに使われるのは大きなやりがいです。
多数のアーティストのオフィシャルライブ写真を撮るフォトグラファーになると、掲載クレジットを見たレコード会社の担当から直接仕事の依頼がくることもあります。

ライブだけでなく、アー写をまかされることも

アー写は、公式のプロフィールとして使用される写真なので、ライブ写真とは別ギャラになります。おもにアルバムやMV(ミュージックビデオ)の撮影時に新しいものに差し替えることが多いですが、ライブを撮るうちにアー写(アーティスト写真)を依頼されるようになることもあります。

実績を積むと指名されるように

音楽業界は同胞意識が強く、デビュー時から「同じ釜のメシ」を食ったチーム(いわゆるワンチームですね)として、その後何十年も一緒に仕事をする、ということが多いです。
一度解散したバンドが再結成する際には、当時ライブを撮影していたカメラマンが指名されるということも。
ジャケ写を撮るカメラマンだと、そういったケースは意外と少なくなります(アートディレクターや制作会社がキャスティング権を持っていることが多いため)。
その代わり、すでに著名になってしまったグループやアーティストのオフィシャルとしてあとから食い込むのは、難しい分野です。

ライブフォトグラファーになるデメリット

土日祝日に休めない

ライブは週末や祝日に行われることが多く、土日や祝日には休むことが難しくなります。

平日の夜、年末年始も休めない

ライブが行われるのはおもに夕方から夜です。売れっ子は年末年始にもカウントダウンイベントなどの撮影が入るため、休めないことが多くなります。

ツアー帯同のために日本全国&海外に行ける

これは、メリットと感じる人もいるかもしれませんが、あえてデメリットの方に入れました。
なぜかというと、最初は「いろんな地域に行けて楽しい!」しかも「海外ツアーにも参加できる!」とだれしも喜ぶのですが、それが日常になるとどうでしょうか?毎年、何年も続くとしたら大変です。
また、ツアー帯同中はほかの仕事を受けられません。断ってもつねに仕事のオファーがくるほど有名にならないと、生活と収入のバランスを取るのが難しくなります。

体が資本!

ほかのジャンルでも言えることですが、カメラの仕事は肉体労働のため、体力勝負!です。
特にライブカメラマンは移動が多く、屋外での撮影もあるために過酷です。年齢が上がってもトッププラスのパフォーマンスを維持する努力が必要です。

また、僕の知人のライブフォトグラファーはライブの撮影をこなしすぎて、難聴になりました。爆音の出るスピーカーの前で連日写真を撮るわけですから、もはや職業病ですね。
幸い回復したのですが、耳をいたわるために、現在は耳栓をして撮影を行っています。「音楽好き」でありながら、好きな音楽を聞くことを封印して、職人として撮影を続けています。

災害などの影響を受けやすい

昔に比べてライブ需要が増えている反面、震災やコロナショックなど、世の中が不安定なときには仕事が激減します。特にライブなどのイベントは影響を受けやすいので、万が一の際の節約や蓄えは必要になるかもしれません。

意外と収入が多くない場合も

後述しますが、音楽業界はCDが売れなくなって久しく、予算が年々厳しくなっています。特に、サブスク(定額制の音楽サービス)が普及してからは、レコード会社や事務所に入る金額も激減してきています。
すべてのフォトグラファーに当てはまるわけではありませんが、華やかな仕事のわりに収入が少ない…ということはあり得ます。

ジャケ写を撮れるとは限らない

音楽業界の中では一般的に「ライブを撮るフォトグラファー」と「ジャケットを撮るフォトグラファー」は別ジャンルとして分けられています。
日々バンドやアーティストと行動をともにし、ツアーにも帯同するというメンバーと距離が近い存在なのに、ジャケット写真は別のフォトグラファーが撮影する、というケースは珍しくありません。

ライブフォトグラファーとして稼ぐには?

ここからは、僕の周囲の知人たちがどうやってライブフォトグラファーになれたか、という話を交えて書きます。

最初はノーギャラから

まずは、身近なバンドやアーティストを撮ることからみんなスタートします。「撮らせてください」とこちらからお願いする場合、最初はノーギャラになります。その代わり、入場料を無料にしてくれて「ゲスト」としてライブに招待してもらえます。
ゲストになると、パンツにロゴの入ったゲストステッカーを貼る、みたいな感じで、会場に無料で入場できるようになります。タダで入場して写真を撮らせてもらう代わりに、撮影した写真はライブ後に無料で提供するわけですね。
結局は飲み代の方がかかってしまって赤字、ってことが多いんですが……。

また、ライブハウスなど会場のスタッフと仲良くなり、箱(会場)が主催するイベントの撮影を行わせてもらうという方法もあります。この場合も入場料が無料になる代わりに、最初はほぼノーギャラです。
いろんなバンドやアーティストを数多く撮っているうちに、ほかのバンドを紹介してもらったり、「お金を払うからライブを撮ってほしい」と依頼されたりするようになります。

ただ、多くの人が、この段階でライブ写真を撮ることをやめてしまいます。
というのは、そこまでの情熱を持ってライブを撮り続ける(アーティストと苦楽をともにする)ことができないからです。

事務所やレーベルに売り込む

アマチュアグループの撮影を行うだけでなく、事務所やインディーズレーベルの担当者と仲良くなって、写真の仕事をもらうという方法もあります。実際のところ、音楽好きならこういった知り合いをつくるのはそんなに難しくないはずです。人脈はフルに活用しましょう!
「〇〇のライブ写真撮りたいんだけど、だれか紹介して!」と言い続ければ、きっと叶います。
プロとして最初の仕事をもらうのには、このような方法が意外と近道、ということは多いです。
僕はもともと雑誌の仕事が多かったので、音楽雑誌の担当さんや、撮影で知り合った

WEBメディアや雑誌でライブの撮影をする

最近はWEBメディアの方が、たくさんチャンスをもらえるかもしれませんね。ライブレポ記事は人気があるので、それなりに仕事の量はあります。ただ、最近は予算削減のため、オフィシャル写真流用で記事だけライターが書く、というケースも増えています。
雑誌は、昔に比べるとかなり少なくなっているので状況的には厳しいかもしれません。(ただ、トライする価値はあります)

ライブ撮影料の目安は?

アマチュアもしくはインディーズの場合、ライブの撮影料はまちまちで一概には言えないのですが、5,000円程度~1、2万円ぐらいが目安のようです。撮影していたバンドやアーティストの人気が少しずつ出て、大きな会場で演奏できるようになるとギャラがアップするという場合もあります。
大手事務所やレコード会社からの依頼になると予算が増えますが、インディーズだとどうしても予算確保が難しい…ということも増えています。ただ、おおむね2~3万円以上が相場です。
WEBメディアに関しては、媒体の知名度と撮影の内容(拘束時間や取材するライブの重要度など)にもよりますが、最近は1万5千円~2万円程度から、というケースが多いみたいです。雑誌の場合はページ単価といって、ページ数によってギャラが異なります。
また、メジャーなバンドのオフィシャルフォトグラファーになると、アー写や、CD特典として同梱されるフォトブックの撮影を任されることなどがあります。そうやってどんどん仕事が増えていきます。

拘束時間については、仕事によるので線引きが難しいですね。
仕事では「忙しければ本番だけでもいいけど、リハから撮れたら撮ってほしい」という連絡がくることが多いですが、そう言われるとよほどのことがない限り、リハが始まる14~15時には会場入りするのがプロというもの。。
そうなると5時間程度の稼働になります。本番のみだと2時間拘束ぐらいです。

ライブ写真を撮るのに欠かせないものは?

ずばり、「アーティストへの愛情、情熱」が必要です。好きなことを仕事にするわけなので、当然ですね。コミュ力もあった方が、つぎの案件につながりやすいです。別にガツガツしている必要はないですが、みんなに愛されるキャラだと有利です。

僕の知人はライブの世界では有名なフォトグラファーで、以前話を聞いたことがあるのですが、仕事の撮影がない日は「自主練」と称して、無料で若手バンドのライブを撮影しにいくと言っていました。

なので、どんなときでも週4~5日はライブの写真を撮ってるわけです。
ほんとにバカですよね(笑)。

でも、そんなバカだからこそ、地道に歩んで、いまの地位を築いているんだなと納得しました。

ライブフォトグラファーはいわゆる「裏方」なので大変な仕事ですが、そのぶんやりがいも大きいです。
「こんな職業あるんだ~」という方も多いかもしれませんが、ライブに行ったときには、ぜひライブフォトグラファーにも注目してあげてください。盛り上がっているお客さんの前に入らないように気を使っていたり、最高潮の直前には会場外の階段を駆け上がって2階から写真を撮ったり、全力でいい写真を撮ることに集中しています。

少しでも、みなさんの興味につながれば幸いです。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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