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「フリーのフォトグラファーになる方法」という相談にプロが真面目に答えてみた

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「フリーのフォトグラファーになる方法」という相談にプロが真面目に答えてみた

どーも、あつしです。20代のときに独立して、フリーランスのフォトグラファーとして活動しています。

これから写真を本格的にやってみたい、という人に時々質問をされることがあります。日々忙しく、個別の質問に答える時間的な余裕はなかなか取れないんですが、もし、親戚や友人から「フリーのフォトグラファーになりたいっていう子がいるんだけど、どうすればいい?」と聞かれた際に、どのように答えればいいかを真剣に考えてみました。

年齢・キャリアによって「成功ルート」が異なる

まず、だれにでも当てはまるアドバイスはありません。経済事情や人生経験、性格も異なりますし。そのため、まずは年齢やいままでのキャリアによって分けて考える必要があります。

相談相手が10代(中高生)の場合

「まず勉強して、大学に入って就職した方がいいと思うよ」と伝えます。

期待していた人、ごめんなさい。
クソつまらない回答ですね……。
けど、10代から20代前半ってやりたいことがたくさん出てくる時期だし、必ずしも写真に限定しなくても、楽しいことはたくさんあります。
写真を撮り続けるためには、機材を購入する費用も必要ですし、「やってみれば」と気軽に言うのも無責任なので。
僕もハタチの頃には「デザイナーになる!」と、デザイナーがどんな仕事かもわからずときめいていましたが、数年後には「写真家になる!」と宣言していました。

相談相手が大学生(もしくは20代前半)の場合

中高生と同じく、「まず就職したほうがいいと思うよ」と伝えます。

もちろん、趣味で写真を撮り続けることはできるので、まず一眼レフカメラを買ってから写真を撮ってみて、どうしてもやってみたいんだったら続ければいいんじゃない?と思うからです。
極端な話、一度就職して、お金を貯めてからの方が社会勉強もできるし、最低限のビジネススキル&マナーも身につくし、絶対有利です。

就職するなら、広告代理店や出版社、制作会社の写真部、という道もあります。
いわゆる「社員カメラマン(社カメ)」という仕事です。
ただ、社カメにはメリットとデメリットがあります。

また、首都圏限定の選択肢ですが、「フリーランスフォトグラファー」になるための王道ルートについても伝えます。
(2~3年ごとに上級職に転職する、というイメージなので勝手に「ドラクエ方式」と呼んでいます)

1. 写真大学もしくは写真専門学校を卒業

2. スタジオマンになる

3. 直アシスタント

4. フリーランスのフォトグラファーデビュー
(1~3はいずれも省略可能)

大学生や専門学校生の場合、在学中に結婚式や写真館、ECサイト撮影など、できるだけ撮影関連のアルバイトをするように伝えます。(実務経験があった方が就職に有利なため)

相談相手が社会人(20~30代前半)の場合

社会人に対しては、まずいままでの職歴やいま在籍している会社についてざっと聞きます。
「入るのが難しい会社」「安定している企業」であれば、辞めたいと相談されても「まずは、ちょっと考えてみてよ」とまず伝えます。
その人のことを深く知らない限り、いい加減なアドバイスはしたくないですしね。

チャレンジするなというのではなく、自分のことを客観視して「会社を辞めたときのメリット・デメリット」を冷静に分析することが必要です。
(「ギャンブル」と「投資」は、本質的に異なります)

転職回数がそれなりに多い人や、辞めても同業種などで転職できる可能性が高そうな人は、「相談相手が大学生(もしくは20代前半)の場合」の項目に記載している「社員カメラマン(社カメ)」もしくは「王道ルート」へのチャレンジを進めます。

また、「週末フォトグラファー」のような形でまずは副業としてやってみて、収入源(クライアント)を確保した上で退職する、という方法もあります。このルートだと、うまく収入のバランスを取りながら少しずつ機材を集めて独立できるのがメリットですが、クライアントはすべて自分自身の力で開拓していく必要があります。
スタジオのライティングなどが学べなくて収入が頭打ちになる可能性があるので、ボーナスなどを利用し、お金を払ってどこかで勉強する、というのが結果的に近道かもしれません。

相談相手が社会人(30~40代以上)の場合

相談されることは少ないのですが、比較的年齢が高い方の場合、「もうすでにこうする」というのを決めていて、「背中を押してほしい」というケースが多いように感じます。日本の場合、未経験での転職でカメラマンを始めるのはなかなか難しいため、「週末フォトグラファー」から地道にキャリアを積んでいく方法をすすめます。
すでに資産がある方は安心ですが、経済状況やご家庭の事情によっても変わってきますね。ただ、社会人経験が豊富なので、仕事をもらう方法(営業力)や、プロデュース力(撮影だけでなく、企画ごとまるっと受けることで、ギャランティが多くなります)を生かした仕事ができる可能性もあります。

さらにプラスαのアドバイス

どれが向いているかは、その人によって違うので一概には言えませんし、その人がどれくらいやりたいかという覚悟によっても変わります。
ただ、何らかのチャレンジをしないことには、もったいないなというのが結論です。それを踏まえた上で、無謀なギャンブルにならないよう、まずは年齢やキャリアによる「成功ルート」を提示した上で、人に合わせた具体的なアドバイスをします。

さらに、一例。
以前お世話になっている美容師さんから「将来、フォトグラファーになりたい」というお客さんがいるので「ではせっかくなので、お会いしたいですね。いい出会いになれば」と即答して、お会いしました。
その子は1~2回ほど手伝いにきてくれたのですが、やがてメールすら返ってこなくなりました。

紹介してくれた方も業界の中ではすごくキャリアのある美容師さんだったのですが、結果的にお互い気まずい思いをしてしまいました…。
ふたりとも忙しい中、できる範囲で時間を割いて向き合ったのですが、実はこうしたことってよく起こります。
(なので、現在は親しい方からの紹介はお断りしています。紹介してくださった方との関係を大事にしたいから)
たぶん、みんな気ままに生きてるので、人生そんなものなんだろうな~とは思います。
ただ、まわりにも迷惑をかけることにもなるので、だれかに紹介してもらうのは「本気」のとき以外は避けた方がいいでしょうね。

フリーランスという働き方はより身近に

今回は、「フリーのフォトグラファーになる方法」を相談されたときに、自分ならどのように答えるかを考えてみました。
僕自身は、ありがたいことに東京都内にスタジオを構え、いろんなクライアントさんのお仕事をさせていただいています。
振り返るとけして順風満帆ではありませんでしたし、ここ10年の間にどんどん業界を取り巻く状況が変わってきているな、と感じます。
フリーランスとして働く、という選択肢もいろいろと広がっていくことは間違いありません。
あまりストイックに自分を追い込みすぎず、いろんな道を探してみましょう。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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