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フォトグラファーが約6万円の事務所を借りて失敗した話【体験談】

2021年3月14日

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フォトグラファーが約6万円の事務所を借りて失敗した話【体験談】

2021年3月14日

以前、自宅の近くに個人事務所を借りていました。フリーランスが事務所を借りるのはどんなとき?という一般論はよくあると思うのですが、個人事務所を借りて維持できずに失敗してしまった体験談は少ないので、あえて書きます(笑)。
だいぶ前の話でいまさら恥ずかしいことではないし、これから個人事業を始める方や、事務所を借りるかどうか悩んでいる方に、少しでも参考になれば幸いです。

事務所を借りた経緯

個人事務所を借りるまでは、1LDKの賃貸物件を自宅件事務所として使っていました。
「自宅件事務所」と言いながらも、1LDKですので作業スペースと寝室の仕切りがなく、ベッドの横にパソコンがあるという状況。ほとんどのフリーランサーが同じような形で仕事をスタートすると思います。
上京してまだそれほど経っていなかった頃なので、30代前半ですね。

当時はレギュラーのアシスタントさんに毎月の費用をお支払いして来てもらうようになっており、ソファの前に横長のカフェテーブルを置いて、その上でパソコン作業をしていました。
ひとりで作業する分にはまったく問題なかったのですし、当時は雑誌や広告のロケ撮影が中心だったため、スタジオ撮影のスペースも特に必要なかったんです。
ただ、作品撮りなどでヘアメイクをするときや、ちょっとした撮影を行うときには事務所的なスペースがあった方がいいな…と感じていたのも事実。
現在のように、安価なレンタルスペースがたくさんある時代ではなかったですし、ちょっとした撮影で場所を借りるにも、1時間1万円の撮影スタジオを、最低でも2〜3時間借りる(2〜3万円の出費)というコストが発生していました。
大きなきっかけは、あるムック本をつくるお話をいただいたときでした。

僕はフォトグラファーとしての仕事がメインですが、雑誌編集部で働いていたという経緯から、編集者としての仕事もできます。
フォトグラファーズ・サミットという大きなイベントを年に数回開催していた時に、あるカメラ雑誌の編集長から「山田さんプロデュースで、まるまる1冊ストロボの本をつくってみないか?」というオファーをいただきました。
基本的にはお声かけいただいた仕事は断らないようにしているので、ぜひとお受けしました。

まずは物件探しから

ただ、仕事をお受けしたあとで、少し問題だなと考えたのは作業スペースです。
ムック本の納期は約3ヶ月ほど。編集作業を進めるとして、1人では絶対に作業ができません。
メインでアシスタントをやってくれていた子は自宅件事務所でもかまわないと言ってくれていたのですが、新しい外注スタッフさん数名に入れ替わりで来てもらうとして、さすがに厳しいかな…と考え始めました。

契約時の初期費用(敷金・礼金、賃貸手数料など)を払ってしまうとむしろ赤字になってしまう可能性があったのですが、そこは若さと勢いが上回りました。
頭の中で電卓を叩いて、すぐに事務所を借りることに。
当時は駐車場も借りていて、その家賃が3万円。
事務所に関しては、月額で支払える家賃の上限を5〜6万に設定。ひとまず2〜3人が同時に作業できるスペースを確保しよう、と思い立ち、物件探しをしました。
不動産屋さんを回って、契約しました。

借りていた事務所は?

1ルームにバストイレがついた、15㎡(平米)ほどの作業場です。1ルームのスペースは5畳ほど。
IKEAで買った机とイスを3台置くと、すぐ手狭になりました。
いちおう、レイアウトを工夫すれば小物程度の撮影はできましたが、それでも「狭い…」という印象。
人物撮影は、4m以上の引きが確保できないので、上半身でないと無理。東京都内の平均的な物件をご存じない方のために書いておくと、学生さんの一人暮らしでも少し狭い、と感じる広さです。一般的に、20㎡以下は狭く感じるのでは?と思います。
そういえば、上京して初めて借りた高円寺の部屋が18㎡(平米)ほどだったので同じくらいの広さですね。
家賃は58,000円。単身者向けの物件だったので、室内はきれいで清潔感がありました。
じつはもう1つ、駅から徒歩2〜3分の場所にいい感じの物件があり、ぎりぎりまで悩みました。
そちらは三軒茶屋の有名な三角地帯(飲屋街)の一角にある、ラーメン屋の2階。
階段が狭く、ボロボロの建物で、中に入ると闇金か探偵事務所か、というような夜逃げしやすいつくり。
非常に悩んだんですが、いわゆる一般的な「清潔感のある事務所」を契約しました。

失敗した原因

ムック本の仕事は1冊だけだったのですが、その後に紆余曲折を経てSHUTTER magazineというフォトカルチャー誌を創刊。
創刊号の立ち上げの仕事もこの事務所で行っていました。
当時、多少無理していたもののなんとか維持できないほどでない、という感じだったのですが、大きな原因は2011年3月に起こった東日本大震災でした。

地震の影響はもちろんのこと、原発がどうなるかという状況で1〜2ヶ月ほど仕事が完全にストップ。
当時、大きなイベント(前述のフォトグラファーズ・サミット)を渋谷のライブハウス O-EASTで開催予定だったのですが、中止になってしまうと会場費を含めて100万以上の損失が発生します。
結果、スポンサーの英断で開催日を延期して実施できることになったのですが、2〜3ヶ月以上、完全に赤字で事務所を維持できるかわからない状態でした。
ちょうど、自宅物件の契約更新が重なったこともあり、「自宅兼事務所で作業スペースを確保できる場所」に引っ越しをすることを決めました。
できるだけ家賃=ランニングコストを少なくして、売上が少ない時でも赤字にならないようにしよう、と判断しました。

反省点

事務所の解約は震災というアクシデントがきっかけですが、一番の原因は「無理して借りていた」というのが大きかったですね。
当たり前なのですが、家賃は固定費なので毎月発生する出費です。
2006年はリーマンショック、2011年は東日本大震災、2020年はコロナショック…。
予期せぬ出来事とはいえ必ず起きることでもあるので、「仕事の規模を大きくにしていく」「万が一の際にも数ヶ月は耐えられる」かどうかという備えは大切です。

あと、解約したもう1つの理由はやはり「撮影ができなかったこと」ですね。
フォトグラファーとして仕事をしていくにあたり、さすがにスペースが狭すぎたのは反省点でした。

よかったこと

なにはともあれ、「月に6万円以上(駐車場を入れると10万円以上)の固定費が払える」というのは自信になりましたね。
毎月の収入と出費のバランスは、どれだけ机の上で計算して頭でわかったつもりでも、実際にやってみると全然違います。
このときの経験をもとに数年後、撮影スタジオ(兼事務所)を借りてリベンジ?を果たすことになります。

まとめ

今回は、個人事務所を借りたけど維持できずに解約したときのお話でした。
後ろ向きな話をすると、国内の経済はジリ貧で、フリーランスワーカーを取り巻く状況は年々悪くなっています。ギャラも毎年落ちる一方…という人も多いのではないでしょうか。
それでも、チャレンジを止めてほしくないなというのが僕の本音であり、結論です。
僕自身、石橋を叩いても渡らないぐらい慎重な方なのですが、それでも「チャレンジし続けたい」という気持ちは、ずっと変わっていません。
シェアオフィスや自宅からスタートする、というのも以前より簡単になっています。
2010年代には、そういう選択肢がなかったですからね…。
なにより、事務所費用をはじめとした高額な固定費を負担しなくても、仕事ができるようになっているのは素晴らしいですね。
いまの時代に合ったやり方と自分のペースで、少しずつ前に進んでいってください。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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