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ライブ写真がうまくなりたかったら結婚式を撮影するべき【上達への近道】

2020年9月8日

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ライブ写真がうまくなりたかったら結婚式を撮影するべき【上達への近道】

2020年9月8日

結婚式・披露宴といったウェディングフォトは、写真業界でも身近なジャンルのひとつです。
じつは結婚式撮影に慣れると、バンドやアーティストなどのライブ写真もうまくなる、という利点があります。どのような共通点があるか、解説します。

結婚式・披露宴の写真とは?

ウェディングフォト、ブライダルフォトとも呼ばれます。
人生における大きな節目だけに、撮影の需要は多いです。都市部だけでなく、全国の自治体で人口に応じた撮影があります。
みんなが結婚式を挙げるわけではないですが、新しく家族になる人の数だけ撮影があります。
すごく身近な撮影ジャンルです。

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ライブ写真(ライブフォト)とは?

バンドやアーティストのライブを撮影することです。
おもにライブハウスなどでの公演中、ステージの真下のスペースに張りついて写真を撮ります。
ロックだけでなく、ジャズやクラシックなど音楽ジャンルを問わず、さまざまな撮影があります。音楽好きなら、だれも経験してみたいと一度は考えたことがあるはず。人気のある撮影です。

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ウェディングフォトがライブ写真に似ている理由

それでは、結婚式・披露宴の撮影と、ライブ写真の共通点を順に見ていきましょう。

・使う機材が似ている
一般的なズームレンズと、望遠ズームレンズをおもに使います。また、指輪の手もとなどを狙うときには望遠の単焦点レンズを使用することもあります。
メインで使う機材構成や、レンズを交換するタイミングも似ているので、機材=資産がムダになりません。

・一瞬を逃さず、切り取ること
結婚式では、流れにしたがって以下のようなシーンが想定されます。

指輪交換
誓いのキス
新郎新婦入場
ケーキ入刀
花嫁(花婿)の手紙

どれもタイミングを逃してはいけない、重要なシーンばかりです。
撮り逃してしまったからといって「もう一度指輪交換してください」というわけにはいきませんよね。
ライブ写真以上に「絶対にこのシーンを押さえなければ」という緊張感があります。
なにせ、結婚式って(ほとんどの方にとっては)一生に一度ですからね…。

こうしたプレッシャーに慣れておくことで、ライブ写真でも「この曲の、このタイミング」というものを予測した動きができるようになります。

・動きの制限がある場所が多い
例えばチャペルなどで、カメラマンがパタパタと走り回っているとどうでしょうか?
招待客は式に集中できませんよね。
基本的には「このあたりから撮ってください」と指示されることが多いです。
また、披露宴でもお客さんが「ケーキ入刀の写真を撮りたい」「新郎新婦の顔を見たい」というときに、棒立ちのままで写真を撮っていたら、みなさんどう思うでしょうか。
人によってはブチキレてしまうかもしれません。。
直接言う人はあまりいないかもですが…。

ライブでも、最前列の人たちは高いお金を払ってチケットを購入し、会場に早めに到着するなど、その1日を目一杯楽しむためにきています。
最前列席を確保するためにすごく努力しているのに、カメラマンが邪魔だったら…。
やっぱりブチキレますね。
このように、ウェディングフォトでは「周囲に対する配慮」や「共感力」みたいなものを学ぶことができます。

・短い時間でいい写真を撮る
結婚式・披露宴はタイムスケジュールにしたがって進行するため、1カットを撮るためにもらえる時間は短いです。
ライブ写真も同様です。撮影者がいい写真を撮るために、アーティストが演奏を止めてくれることはありません。
わずか1~2秒の間に、いい写真を撮る技術が磨けます。

・1つのシーンをさまざまな角度から切り取る
結婚式は大まかな流れがあり、撮影場所が制限されている状況もあります。そんな中で、撮影者はたくさんのカットを撮り分ける必要があります。

ライブも、セットリストにしたがって進んでいきます。
1曲が演奏される間に、

演者の表情
ギターとベースの絡み
ボーカルのシャウト
メンバーの表情
演奏者全員が写っているカット

など、さまざまなシーンを撮り分ける必要があります。

・イメージカットを撮る視点が養える
最初のうちは余裕がなくて新郎新婦の表情だけを追いがちなのですが、慣れてくると「暗闇の中に揺れるキャンドルの灯り」「ウェルカムボード」「新婦が身につけているアクセサリー」など、イメージカットを撮れるようになります。
人に感動を与える写真は、1枚の中にストーリーがあります。
ただ「目の前の状況を記録しました」というだけではダメです。

結婚式の撮影に慣れることで、ライブでも、ただ演奏を記録するだけでなく、「ふとした瞬間の笑顔」「ベースを弾いている手もと」「自作のエフェクター」など、臨場感を伝えるためのイメージカットが撮れるようになります。

・暗い場所での撮影に慣れることができる
午後遅い時間からのガーデンウェディング、レストランウェディングなどは自然光が足りない状況が多いです。また、一般的な結婚式場の披露宴でも「ケーキ入刀」「シャンパンタワー」などの撮影時には会場の照明が暗くなります。
暗い場所でカメラの設定をどうするかを学ぶことで、ライブ写真の撮影時にも応用が利くようになります。

僕の経験から伝えられること

僕がライブの写真を撮り始めた頃は、ハードコアと呼ばれる荒々しいバンドの撮影が多かったです。
(当時はみんな恐かった…)最初にバンドの写真を撮ったのは22~23歳の頃だったと思います。
26歳のとき、地元・熊本で勤めていた出版社を辞めて「写真家になる!」と決意し、東京に出ることを決めました。
すぐに上京せず、新聞社や出版社からお仕事をいただきながら、1年ほど地元でフリーランスとして活動していました。ひとりでやれるものなのかどうか自信もなかったし、当時はまさに「腕試し」のつもりでしたね。
その間に、結婚式の撮影にも関わらせてもらったのですが、いままであまり経験がなかった分野ということもあり、新鮮な発見がいくつもありました。

その頃はまだ、フィルム時代。一眼レフに36枚撮りのフィルムをつめて、撮り終えるともう1本のロールにチェンジして撮影を続行。
現場には2台の一眼レフを持って行き、それぞれのカメラには標準ズームレンズと望遠ズームレンズをつけて撮影していました。(シーンに合わせて、ときどきレンズ交換もしながら)
万が一、カメラが壊れでもしたら大変なので。ウェディングフォトでのカメラ2台回しは必須なんです。
新郎新婦のみなさんは、写真にそれほど詳しい方ばかりではないので「いい写真」「ダメな写真」の判定が厳しいんです。
もちろん多くのカップルは優しい方ばかりですが、カメラマンの「知名度」や「実績」の前に、写真がダメだと話になりません。
1ロール36枚という限られた枚数の中で、1枚でも多くの「いい写真」を撮らないといけない。
しかも、フィルム撮影なので現像などのコストもかかります。予算が無限にあるわけではなく、ある程度決まった本数の中で、たくさんのカットを撮り分ける必要がありました。

大したセンスはなかったものの、「仕事の撮影」に関してはそれなりに自信があった(いま考えるとまだまだでしたが)20代の僕は、思いっ切りハナをへし折られましたね。
ただ、約1年弱という短い結婚撮影の間にも、素敵なカップルとの出会いや、ビーチでの前撮りといったロケーション撮影を経験させてもらうなど、多くのことを学ばせてもらいました。

上京後、最初の数年はライブやクラブの写真をたくさん撮っていました。
熱意あふれる編集者から、音楽評論家・大貫憲章さんが率いるロンドンナイトの撮影を頼まれたり、クラブミュージック隆盛期に、DJとしてプレイするM-floのVerbalさんを撮影したり。
そのたびに、あのときの経験が生きているな、と思います。

対極にあるジャンルから学べること

あくまでも経験論ですが、「結婚式・披露宴」と「ライブ」の写真に共通点がある、と僕は感じています。
ぱっと見、真逆のジャンルだったとしても「じつは共通点がある」ということは多いもの。
食わず嫌いより、いろいろなことに挑戦してみることで、自分自身の幅を広げることができる。
「ムダな挑戦はひとつもない」というのが、僕の持論です。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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