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どうやって撮影スタジオ経営者になった?5人にインタビューしました

2020年9月7日

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どうやって撮影スタジオ経営者になった?5人にインタビューしました

2020年9月7日

「スタジオ経営で稼ぐ」「レンタルスペースで稼ぐ」って憧れですよね。いわゆる不労収入(働かなくてお金が入ってくる)なので、ビジネスとしてはおいしいように感じてしまうのですが、実際のところどうなんでしょうか。経営者5人にインタビューした内容をまとめます。

撮影スタジオ経営者へのインタビュー

僕は、写真業界で有名になったフォトイベント「PHOTOGRAPHERS SUMMIT」や、SHUTTERというフォトカルチャー誌をつくっていたという経緯から、いろんな人に話を伺う機会を得ることが多いです。
別の企画で、もともとフォトグラファーだった方や、撮影関連の仕事をしていた人がつくったスタジオを訪れることがあり、そのときに「どのようにしてスタジオ経営に行き着いたか」という話を聞きました。
本記事では、そのときにヒアリングした内容をまとめてみたいと思います。

ケース1:雑誌の売れっ子フォトグラファーから転身

バブル時代に、赤文字系のファッション誌でトップフォトグラファーとして活躍していたAさん。独立したのは20代の頃。
当時は寝る間もないほど忙しかったそうなのですが、ギャラもかなりの金額だったそう。
ある程度の期間(20年ほど)稼いでから、都内の一等地にスタジオを購入。
現役フォトグラファーとしての人脈を生かして、出版社からの依頼が増えるようになりました。経営が軌道に乗ってからは、フォトグラファーの仕事はほぼ引退。
「バブル時代の高額ギャラだったから、成功できた」と語ってくれました。

ケース2:広告系フォトグラファーが自社スタジオを設立

Aさんと同じく、バブル期に20代で独立。広告系の商品撮影がおもなフィールドで、当時の売上はつねに2000万オーバーだったとのこと。
たまたま良物件と巡り合ったことでスタジオ経営にも手を広げ、おもに広告制作会社や大手代理店からの依頼が増えるようになります。
いまでも現役のフォトグラファーなので、ときどき自分の撮影で使うことも。
華やかに見えますが、以前に比べて業界の状況がかなり悪いため、「維持するのが大変…」というのが本音だそうです。

ケース3:制作会社独立後にスタジオ経営

都内某所にあるポップな内装のスタジオ。広さはそこまで大きくないのですが、ファッション系の撮影やTV、WEBムービーの収録などでよく利用されているそうです。
オーナーのCさんは、もともと制作会社でキャスティング(プロデューサーなどからタレントのブッキングを依頼される仕事)に携わっていて、その後に独立。
Cさんは現在もキャスティング業務はフリーランスとして続けているため、スタジオ経営と二足のわらじを履いています。
順調に見えますが「ここ数年、安価な金額設定をしている競合も増えてきたので、結局は価格勝負になる」と経営の難しさを語ってくれました。

ケース4:スタジオ経営から内装業に進出

人物撮影で訪れたスタジオ。アメリカの片田舎にあるカフェのような、カントリーな雰囲気の内装に興味を抱き、オーナーのDさんに話を伺いました。
もともと制作会社勤務で、スタジオ探しやスケジュール表の作成、ロケ弁(弁当)の手配などといったさまざまな業務を担当していたことから、小物選びのセンスには自信があったDさん。
経費を抑えるため、内装に関する大工仕事の多くは自分で仕上げた、というのを聞いてびっくり!
ほとんどプロじゃないですか。。
内装のDIYに関してはもともと趣味だったそうですが、趣味が高じていまでは内装業も副業として手がけるようになったそうです。
「じゃあ、うちのスタジオも改装するときはお願いします。いずれ、壁の1面をおしゃれな雰囲気に変えたいので…」と伝えて、依頼する際には相談に乗ってもらえるようお願いしました(笑)。
1時間あたりの費用を比較的安価に設定しているため、撮影だけでなく、パーティなどの利用も多いようです。

ケース5:商業写真スタジオを借りて独立

都内に自分が撮影するスタジオスペースを借りているフォトグラファーのEさん。
物件は、もともと倉庫として使われていた場所。フリーランスとして独立する際に借りたそうで、機材の購入費と物件取得費を合わせ、500万ほど借金をしたそうです。
すでに結婚していて子どもも生まれる予定だったため、独立直後は極限までお金がなく、外部の撮影でも弁当が出ないときはおにぎりとお茶を持っていって極限まで切り詰めいたとか。
最初は仲のいい同業者と共同経営をしていたんですが、お金が絡むとうまくいかず。
自分の撮影がないときには、先輩や知人のフォトグラファーに貸し出しをする形に落ち着きました。
借りたお金は約3~4年で完済。
僕は現金主義なので、お金を借りてスタジオを持つ、というのはすごいなと感心します。

撮影スタジオ経営者の悩み

魅力的な話ばかりに感じてしまうスタジオ経営ですが、経営者としての悩みも多いようです。
全員に共通していたのは「固定費がきつい」ということですね。
アパート・マンション経営などは個人、法人といった対象を問わず、入居が決まれば毎月の家賃収入が発生します。
スタジオ経営の場合は、予約が入ったときだけに貸し出しするため、顧客が増えていかなければ経営は安定しません。
1回の撮影にかける予算も年々縮小されており、競合の安価な場所もつぎつき増えています。
また、災害などが起こったときには、一定期間、撮影の予約がまったく入らなくなることもあります。
たとえば、コロナウイルスや台風直撃、といったリスクの際にも、家賃や人件費は発生するので、必ずしもおいしい仕事とは言い切れない…と感じました。

今回は、僕が実際に聞いた「撮影スタジオ経営者」の話をまとめてみました。
事業、つまりビジネスとして仕事を回していくのは、みなさんいろいろ大変なんだなというのが実感です。
経営者に直接質問できる機会は少ないので、協力いただいた方々には感謝しています。
写真や動画の撮影がすごく身近になっている時代なので、いろいろな人に気軽に借りてもらえるスペースの方が成功しやすいかもしれませんね。
いろいろ妄想するだけでも、楽しいです。

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Atsushi Yamada

Atsushi Yamada

写真家。ときどきディレクターもやってます。 ワーホリ渡豪、20代で出版社立ち上げてフリーに。 英会話は日常会話レベル。都内の自社スタジオに棲息。 ブログでは写真や文章、クリエイティブ全般について語ってます。

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